つぼみのかおり ーはじめの一歩ー

 平成22年1月に発信した「つぼみのかおり」から・・・ 

「Dちゃん、今日初めて歩いたんです。一歩、二歩、もう嬉しくて嬉しくて・・・」と感激さめやらないといった表情で話してくれたのは、〇歳児担任の保育士たちです。

 「そのあと、もう一回歩く姿が見たくて何回か励ましてみたんですけれど、Dちゃん、キョトンとした表情で期待には応えてもらえませんでした。」自分たちのはやる気持ちに自戒を込めて苦笑いの保育士の表情からは、Dちゃんへの愛情が満ち溢れていました。日々のかかわりの中で、”偶然”にできたことに大感激し、「すごい!」と手を叩いて喜んでくれる。そしてギュッと抱きしめてくれる大人がそばにいることが、子どもたちの発達や感情が豊かに育っていく原点だと私は思います。

 話は少し変わりますが、「この夏をめどに、トイレでおしっこができるようになってほしいと思っているんですけれど・・・」先日、あるお母さんからこんな相談を受けました。○○ができるようになってほしいというのは親御さんなら当然の心情です。しかし、私たち保育士は「何かさせる」「頑張らせて褒め、力をつけさせる」に主眼を置くのではなく、目に見えない子供の心の動きをつかんで、それに大人が応え、そして、子どもが自ら”やってみよう”という気持ちが育つことを何よりも大切なことと考えています。乳児組の子どもたちは”ことば”を理解して動くことはまだ難しい年齢ですが、雰囲気は敏感に感じ取ります。子どもが”偶然”できたことを自分の力でできたように、大人が下支えすることで、「またやってみよう」という意欲につながるのだと思います。

 「ゆっくりおおきくなろうね」そんな気持ちをいつも心の真ん中においてかかわっていきたいですね。

 さて、Dちゃんの”はじめの一歩”を今日の連絡帳に書こうかどうかおおいに迷いましたが、結局書かないことにしました。それは、Dちゃんの”はじめの一歩”は、世界で一番好きなお母さんの感激した心で受け止めてほしいと思ったからです。そんな保育士の願いはすぐ実現しました。「先生!Dが歩いたんです。嬉しくて、嬉しくて、何度も歩かせてしまいました。」翌日お母さんからの感激の一文が連絡ノートにありました。保育士とお母さんが、感動を分かち合える嬉しい瞬間です。

 さすがお母さん、あんなに保育士が一生懸命励ましても応えてくれなかったDちゃんは、お母さんの喜びに何度も何度も応えたんですね。感動の翌日、保育士の期待は高まる一方です。しかしDちゃんよほどお家で歩き疲れたのか、保育園では一歩も歩くことはありませんでした。

ホッとコミュニケーション

“あなたも大切、わたしも大切、共に育ちあう”お互いの気持ちを理解し、心の通じ合う温かい関係作りを学んでいきます。

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